JIS H 8610
【この記事の要点】
- JIS H 8610とは: 鉄鋼部品に施す「電気亜鉛めっき」の品質(膜厚や耐食性など)について定めた日本産業規格(JIS)です。
- 等級と記号の理解: 膜厚の厚さによって1級〜6級に分類され、図面には「Ep-Fe/Zn 8/CM2」のような記号でめっきの厚さやクロメートの種類が指示されます。
- 古い図面の落とし穴: 過去のJIS指定(有色クロメート等)のまま加工すると環境規制(RoHS指令)に違反する恐れがあるため、NBKでは「三価クロメート」への適切な置き換えをご提案します。
JIS H 8610とは?|電気亜鉛めっきの品質を保証する国家規格
機械部品の設計図面を見ると、表面処理の欄に「JIS H 8610」や「Ep-Fe/Zn 8/CM2」といったアルファベットと数字の羅列が記載されていることがよくあります。これは、部品をサビから守る「電気亜鉛めっき」の仕様を定めた重要な国家規格です。本記事では、この規格が意味する内容と、図面指示を実際の製品に落とし込む際の注意点について解説します。
1. JIS H 8610が定める「等級(膜厚)」の基準
JIS H 8610では、めっきが施される環境の厳しさ(屋内か、屋外か、海岸沿いか等)に応じて、必要な「最小膜厚」が等級として定められています。
- 1級(25μm以上): 屋外の過酷な腐食環境用(※バレルめっきでは厚みがつきすぎ、ネジ等の寸法精度が出にくいため注意が必要)
- 2級(13μm以上): 屋外の通常の環境用
- 3級(8μm以上): 屋内の湿気の多い環境や、一般的な屋外用(※最もよく指定される汎用的な等級です)
- 4級〜6級(5μm〜2μm以上): 屋内の通常の環境用
等級の数字が小さいほど膜厚が厚く、防錆力が高いことを意味しますが、同時に部品が太るため、寸法公差とのバランスを考慮した等級選び(3級や4級など)が設計の鍵となります。
2. 設計図面における「JIS記号」の正しい読み方
図面には、等級だけでなくクロメート処理の種類を含めた「記号」で指示が書かれます。代表的な例を分解して読み解きましょう。
【例】 Ep-Fe/Zn 8/CM2
- Ep-Fe: 鉄(Fe)の素地に対する電気めっき(Electroplating)であることを示します。
- /Zn 8: 亜鉛(Zn)めっきを「8μm以上(=3級)」施すという意味です。
- /CM2: めっきの上の後処理として、第2種クロメート(有色クロメート)を施すという意味です。(※CM1は光沢、CM2は有色などの分類があります)
3. 古い図面の落とし穴と、日本バレル工業の「RoHS対応」提案
ここで設計者様が最も注意すべきなのが「クロメートの指定」です。何十年も前に引かれた図面には、上記のように「CM2(有色クロメート)」と指定されていることが多々あります。
しかし、従来の有色クロメート(六価クロム)は、現在のRoHS指令などの環境規制で使用が厳しく制限されています。図面通りに加工すると、製品を海外へ出荷できなくなるという重大なトラブルに発展します。
日本バレル工業(NBK)では、このような古いJIS指定の図面をお預かりした場合、環境規制を完全にクリアしつつ、JIS H 8610が求める耐食性(塩水噴霧試験のクリア時間)と同等以上の性能を発揮する「三価クロメート処理」への仕様変更を必ずご提案し、お客様のコンプライアンスと品質をお守りします。
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 図面に「JIS H 8610」とだけ書かれています。どうすれば良いですか?
A. 規格名だけでは「どのくらいの厚さ(等級)で、何色のクロメートにするのか」が分かりません。部品の使用環境や寸法公差(ネジの有無など)をお伺いし、最適な等級(例えば3級の8μm以上)と三価クロメートをご提案させていただきます。
Q2. JIS H 8610の規格に準拠しているという「検査成績書」は出せますか?
A. はい、発行可能です。当社の蛍光X線膜厚計を用いて、ご指定のJIS等級(最小膜厚)を確実に満たしていることを証明する検査成績表を製品に添付して納品いたします。
Q3. 図面に「MFZn2-C」という指定がありますが、これもJISですか?
A. はい、それは旧JIS規格(あるいは自動車メーカーの独自規格に近い表記)による電気亜鉛めっきの指示です(2級相当・有色クロメートなど)。現行のJIS H 8610規格や環境対応仕様(三価クロメート)へ読み替えて加工を行います。
Q4. バレルめっきで、1級(25μm以上)の厚いめっきは可能ですか?
A. 理論上は時間をかければ可能ですが、バレルめっきで25μm以上つけると、角の部分が太りすぎて寸法不良(ドッグボーン現象)になったり、部品同士の打痕が目立ったりするリスクが高まります。防錆力が必要な場合は、膜厚は3級(8μm)程度に抑え、「高耐食三価クロメート+トップコート(封孔処理)」による防錆力アップをご提案します。
Q5. 三価クロメート(三価ホワイト・三価ブラック)はJIS規格に含まれますか?
A. JIS規格も環境対応に合わせて改訂が進んでおり、現在のJIS H 8610では「六価クロムを含有しないクロメート皮膜」が標準的に扱われるようになっています。したがって、三価クロメートでの処理はJIS規格に完全に準拠した正当な表面処理です。
「図面の指示通り」以上の最適な品質をご提案します
「JISの指定があるが、環境規制に違反しないか不安」「ネジが入らなくなるのではないか」。そんな設計者様の不安を、表面処理のプロフェッショナルである日本バレル工業が解決します。単に規格通りに塗るだけでなく、寸法公差と防錆力を両立する「最新の最適解」をご提案しますので、図面指示にお悩みの際はぜひご相談ください。
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