ミルシート(鋼材検査証明書)

【この記事の要点】

  • ミルシートとは:鉄鋼メーカーが発行する、鋼材の化学成分や強度などの品質を保証する「鋼材検査証明書」のことです。
  • めっき証明書との違い:めっき業者が証明できるのは「表面の皮膜」のみであり、「部品の母材(中身)」の証明にはミルシート等の材料証明が必要です。
  • 実務のルール:部品全体の環境データを作成するには、表面処理のデータと材料メーカーのデータを統合して管理する必要があります。

ミルシート(鋼材検査証明書)とは?|めっきの証明書との違い

購買実務や品質管理において「この部品に使われている鉄の成分を知りたいから、めっき業者に証明書を出してもらおう」と考えると、実務上の大きな認識のズレが生じます。鉄材そのものの成分や品質を証明する「素材の血統書」の役割を果たすのがミルシート(鋼材検査証明書)です。めっき業者は「表面に付着させた皮膜」しか証明できないため、材料自体の証明は切削業者などを通じて鋼材問屋へ手配するというルートの違いを知っておく必要があります。

1. 「表面」の証明と「中身」の証明は別ルート

ミルシート(Mill Test Certificate)とは、鉄鋼メーカー(製鉄所)が製品を出荷する際に、そのロットの中に含まれる炭素やマンガンなどの化学成分の割合や、引っ張り強さといった機械的性質がJISなどの規格を満たしていることを保証する書類です。

一方で、めっき加工業者は、すでにお客様の手によって形作られた部品をお預かりして表面処理を行います。そのため、責任を持って発行できるのは「付加しためっき皮膜の厚み」や「めっき液由来の規制物質が含まれていないことの非含有証明書」などに限定されます。部品全体としての完全な環境データ(chemSHERPAなど)を作成するためには、「表面(めっき業者)」のデータと「中身(鋼材問屋やメーカー)」からのミルシートや環境データの両方を発注者側で統合し、管理するプロセスが必要となります。

2. よくある質問(FAQ)

Q1. めっき屋さんで鉄の成分を分析して証明してもらうことはできませんか?
A. 外部の分析機関に出せば可能ですが、非常に高額な費用と時間がかかります。また、それはあくまで「分析に出した1個の部品の結果」に過ぎず、素材ロット全体の品質をメーカーとして保証するミルシートの代わりにはなりません。
Q2. RoHS指令の調査でもミルシートは必要ですか?
A. はい。部品全体としての含有調査が求められる場合、母材の含有情報(ミルシートや材料SDS等)とめっき皮膜の情報の両方を組み合わせる必要があります。
Q3. 真鍮材(快削黄銅)の鉛含有はどう証明すれば良いですか?
A. 真鍮には削りやすくするために鉛が含まれますが、RoHS指令においては「鉛4重量%以下」であれば適用除外として認められます。真鍮メーカー発行の材料証明によって適用除外用途であることを申告し、規格をクリアするのが一般的です。
Q4. ミルシートは材料を買えば必ずもらえますか?
A. 鋼材を購入したルート(問屋等)を通じて依頼すれば基本的に入手可能ですが、ホームセンターで購入した材料や、出所不明の少量の端材等では追跡が難しく、発行されない場合があります。
Q5. めっきの証明書には何が書かれているのですか?
A. 膜厚計を用いた厚みの測定結果(検査成績書)や、使用しためっき液・クロメート液等にRoHS指令などの規制物質が含まれていない旨の宣言(非含有証明書)などが記載されます。

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