未着(めっきが乗らない)

【この記事の要点】

  • 未着とは:製品の表面の一部、または全体に金属皮膜が全く析出せず、下地(素地)がむき出しになったままになる重大なめっき不良です。
  • バレルめっきの張り付き:ワッシャーなど平らな部品が液中でピタリと重なり合うと、その面には電気が届かず未着になります。
  • 穴の奥の未着:細く深い穴の奥には電気の力線が入り込めないため、電気めっきでは金属を乗せることが物理的に困難です。

未着(めっきが乗らない)とは?|バレルめっきの張り付きと対策

めっき加工の最も致命的なトラブルの一つが、本来めっきされるべき場所に金属が全く乗らない「未着(みちゃく)」です。未着部分には防錆力や耐摩耗性といった機能が全く付与されないため、そこから一気にサビや腐食が進行し、製品の破壊に直結します。未着が発生する理由は、前処理の汚れ残りなどの化学的な要因と、電気が届かない・部品が重なり合うなどの物理的な要因に大別されます。本記事では、特に大量生産で多発する物理的な未着のメカニズムとその対策を解説します。

1. 「張り付き」と「付き回り性」の壁

小さな部品を大量に安価に処理するバレル(回転籠)めっきにおいて、最も警戒すべきなのが「部品同士の張り付き」です。ワッシャーや平らな板状の部品は、めっき液の表面張力によって部品同士がガラス板のようにピッタリと密着してしまいます。重なり合った部分にはめっき液も電気も触れないため、そこだけ丸く素地が露出した未着不良となります。これを防ぐには、製品の間に隙間を作るためのクッション材(ダミー)を混入させたり、バレル内で部品が確実に離れるような攪拌(かくはん)技術が不可欠です。

また、部品に「細くて深い穴(止まり穴など)」がある場合も未着が多発します。電気めっきにおいて、電流は外側に集中し、穴の奥深くには入り込んでいきません(付き回り性が悪い、と言います)。液が届いていても電気が届かなければ金属は析出しないため、穴の奥だけが未着となってサビてしまうのです。この物理的な壁を突破するには、補助陽極を用いて強制的に穴の中に電気を送り込むか、電気を使わない「無電解めっき」へ工法を変更するアプローチが必要となります。

2. よくある質問(FAQ)

Q1. どんな形状が未着(張り付き)を起こしやすいですか?

A. ワッシャーなどの平坦な面が広い部品、薄い板材、あるいはカップ状でお互いにはまり込んでしまうような形状の部品は、バレルめっきで極めて高い確率で張り付きを起こします。

Q2. 脱脂(油落とし)が不十分でも未着になりますか?

A. なります。金属表面に油膜が残っていると、水溶液であるめっき液が弾かれてしまい金属イオンが表面に到達できないため、その部分が斑点状の未着不良(あるいは密着不良)となります。

Q3. 穴の奥の未着を防ぐ無電解めっきとは何ですか?

A. 電気を使わず、めっき液中の化学的な還元反応のみで金属を析出させる技術です。電気が届かない深い穴の奥でも、液さえ触れていれば均等な厚みでめっきをつけることができます。

Q4. エアポケットによる未着とは何ですか?

A. 部品を液に浸けた際、くぼみや袋穴の中に空気が抜けずに溜まってしまい、液が金属に触れないことで起こる未着です。部品を揺らすなどの液抜きの工夫が必要です。

Q5. 設計段階で張り付きを防ぐ工夫はありますか?

A. 平らな面にわずかな凹凸(エンボス)を設けたり、全体に軽いR(曲面)をつけることで、部品同士が完全に密着するのを防ぎ、バレルめっきでの歩留まりを飛躍的に向上させることができます。

めっきが乗らない・張り付くといった不良でお悩みの方へ

「薄い部品が張り付いて素地がむき出しになる」「深い穴の中が未着でサビてしまう」といった深刻な品質トラブルでお困りでしたら、ぜひ日本バレル工業に相談してください。部品の形状や特性を詳細に分析し、専用のダミー(緩衝材)の活用や最適なバレル撹拌技術、あるいは工法変更を含めて、未着を根本から防ぐ解決策を一緒に考えご提案いたします。確実な被覆で製品の信頼性を高めるお手伝いをいたします。

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