マスキング(部分めっき)

【この記事の要点】

  • マスキングとは:製品の一部にだけめっきをつける(または、つけない)ために、処理したくない部分を専用のテープや樹脂などで覆って保護する技術です。
  • 機能的な役割:電気を通したくない部分(絶縁)の確保や、ネジ穴の寸法維持など、図面の厳格な機能指示を実現するために用いられます。
  • 浸炭防止:鉄鋼の熱処理において、硬くしたくない部分に銅めっきを施す際、硬くしたい部分をマスキングして炭素の侵入をコントロールします。

マスキング(部分めっき)とは?|機能要件を満たす保護技術

めっき加工は基本的に製品全体を液に浸漬して処理を行いますが、機械設計において「この面だけは電気を通したくない」「このネジ穴はめっきで太らせたくない」といった機能的な理由から、部分的にめっきを避ける指示が出されることがあります。このような「めっきが不要な部分」を薬品から守り、指定箇所のみに処理を施す技術が「マスキング(部分めっき)」です。本記事では、手作業の緻密さが求められるマスキング技術の目的について解説します。

1. マスキングが求められる主な目的

マスキングは、単なる外観の塗り分けだけでなく、部品の物理的・電気的機能を満たすために行われます。

■ 寸法公差の維持とネジ穴の保護

無電解ニッケルめっきなどで厚い皮膜をつける場合、精密な雌ネジ(タップ穴)にめっきがつくと、ボルトが入らなくなる寸法不良を引き起こします。これを防ぐため、めっき前にネジ穴にシリコン製の栓(プラグ)を詰めたり、専用のボルトをねじ込んで液の侵入を防ぎます。

■ 絶縁性や導電性の確保

アルマイト(絶縁被膜)処理を行うアルミ筐体において、アースを取るための特定の面だけは電気を通す必要があります。この場合、導通させたい部分をテープでマスキングしてからアルマイト処理を行い、後でテープを剥がすことで素地を露出させます。

■ 熱処理における「浸炭防止」

ギアなどの鉄部品を熱処理(浸炭焼き入れ)する際、「軸の部分は後から削るため柔らかいまま残したい」という場合があります。この時、硬くしたくない部分に炭素を通さないバリアとして「銅めっき」を施しますが、逆に硬くしたいギアの歯面はマスキング液(剥離可能な樹脂塗料など)で覆って銅めっきがつかないように保護します。

2. よくある質問(FAQ)

Q1. マスキングにはどのような材料を使いますか?

A. 処理するめっき液の種類(酸性・アルカリ性)や温度に耐えられる、専用の耐薬品性テープ(カプトンテープなど)、シリコンゴム製の栓、液状のマスキング塗料などが用いられます。

Q2. コストは高くなりますか?

A. はい。マスキングテープの貼り付けや剥がし作業は、原則として人の手による繊細な手作業となるため、部品の形状が複雑なほど工数が増え、加工コストは上昇します。

Q3. 境界線をミリ単位で綺麗に出せますか?

A. ある程度は可能ですが、めっき液がテープの隙間にごくわずかに滲むこと(液滲み)があるため、図面上で境界線に厳密な公差が求められる場合は事前にご相談が必要です。

Q4. バレルめっきでマスキングは可能ですか?

A. 回転による摩擦でテープや栓が外れてしまうリスクが高いため、原則としてマスキングを行う部品は一つ一つ固定する「静止(ラック)めっき」での処理となります。

Q5. めっき後に削って落とすことはできませんか?

A. 可能です。全体にめっきを施した後、不要な部分を機械加工(切削や研磨)で削り落とす設計の方が、マスキング作業よりトータルコストが安くなるケースも多々あります。

部分めっきやマスキングの図面指示でお悩みの方へ

「この面だけはめっきをつけないでほしい」「熱処理の浸炭防止を確実に行いたい」といった複雑な図面指示でお困りでしたら、ぜひ日本バレル工業に相談してください。部品の機能要件を詳細にヒアリングし、マスキングの工法や、あるいは後切削を含めたコストダウンの解決策を一緒に考えご提案いたします。手作業の手間を惜しまない、確実な機能性めっきをご提供します。

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