電磁式・渦電流式膜厚計

【この記事の要点】

  • 電磁式・渦電流式膜厚計とは:製品を破壊することなく、プローブ(センサー)を表面に当てるだけで皮膜の厚さを瞬時に測定できるハンディタイプの測定器です。
  • 測定原理の違い:鉄などの磁性金属には「電磁式」、アルミや銅などの非磁性金属には「渦電流式」というように、素材によって使い分けられます。
  • 蛍光X線膜厚計との違い:手軽で現場での測定に優れますが、極小部品や複雑な合金めっきの精密測定には据え置き型の蛍光X線膜厚計が適しています。

電磁式・渦電流式膜厚計とは?|測定原理と蛍光X線との使い分け

めっきや塗装などの表面処理において、図面で指定された膜厚(厚み)が正確に守られているかを確認することは品質管理の基本です。その際、製品を壊さずにその場で素早く厚みを測ることができる機器が「電磁式膜厚計」および「渦電流式膜厚計」です。ハンディタイプで持ち運びが容易なため、製造現場から出荷検査まで幅広く活躍しています。本記事では、これら2つの測定器の原理の違いと、より精密な「蛍光X線膜厚計」との使い分けについて解説します。

1. 素材によって異なる2つの測定原理

これらの膜厚計は、下地となる金属(素地)の性質によって「電磁式」と「渦電流式」を明確に使い分ける必要があります。

■ 電磁式膜厚計(対象:鉄などの磁性金属)

鉄や鋼などの磁石にくっつく金属(磁性素地)の上に施された、非磁性の皮膜(亜鉛めっき、銅めっき、クロムめっき、塗装、アルマイトなど)の厚さを測るのに使用します。プローブの先端から発生する磁力線が鉄の素地に到達する際の「磁気抵抗」の大きさを利用します。皮膜が厚ければ磁石と鉄の距離が離れて磁気抵抗が大きくなり、薄ければ小さくなるという物理現象を膜厚に換算します。

■ 渦電流式膜厚計(対象:アルミ・銅などの非磁性金属)

アルミニウム、銅、真鍮、非磁性ステンレスなどの磁石にくっつかない金属(非磁性素地)の上に施された、絶縁性の皮膜(アルマイトや塗装など)の厚さを測るのに使用します。プローブから高周波電流を流して金属表面に「渦電流」を発生させ、プローブと素地との距離(皮膜の厚さ)によって変化する渦電流の大きさ(電気的インピーダンス)を捉えて膜厚に換算します。

2. 蛍光X線膜厚計との違いと使い分け

現場での使い勝手が良い電磁式・渦電流式膜厚計ですが、「プローブを平らな面に密着させる必要がある」という弱点があります。そのため、数ミリサイズの微小な電子部品や、ネジの谷間、複雑な曲面の測定には不向きです。

一方で「蛍光X線膜厚計」は、X線をピンポイントで照射して発生する蛍光X線のエネルギーを分析するため、極小部品の測定や、亜鉛ニッケル合金めっきなどの「合金の成分比率」と「膜厚」を同時に測定することが可能です。実務では、大型部品や平面の抜き取り検査には電磁式を用い、精密部品の全数・ロット検査や合金めっきの品質保証には蛍光X線膜厚計を用いるという使い分けが一般的です。

3. よくある質問(FAQ)

Q1. 電磁式膜厚計でニッケルめっきは測れますか?

A. 鉄上の電気ニッケルめっきは、ニッケル自体が磁性を持っているため、通常の電磁式膜厚計では正確に測定できません。この場合は蛍光X線膜厚計などを使用する必要があります。

Q2. 樹脂やプラスチックの上のめっきは測れますか?

A. 電磁式も渦電流式も「下地が金属であること」が前提となるため、樹脂上のめっきの測定はできません。超音波式膜厚計や断面観察、蛍光X線などが用いられます。

Q3. 測定前にゼロ点調整(キャリブレーション)は必要ですか?

A. はい、必須です。めっきを施す前の「素地(同じ材質・形状の金属)」を使用してゼロ点を合わせ、さらに標準板(厚みが分かっているフィルム等)を用いて校正を行ってから測定します。

Q4. 表面がザラザラしている部品でも測れますか?

A. 鋳物など素地が粗い場合、プローブが密着せず測定値に大きなバラツキが出ます。複数回の測定を行い、その平均値を採用するなどの工夫が必要です。

Q5. デュアルタイプ(両用)の膜厚計とは何ですか?

A. 下地が鉄(磁性)かアルミ(非磁性)かを自動的に判別し、電磁式と渦電流式の測定モードを自動で切り替えてくれる便利なタイプの膜厚計です。

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