脱脂(アルカリ脱脂・溶剤脱脂)
【この記事の要点】
- 脱脂とは:めっき工程の最初に行う、金属表面に付着した加工油や防錆油などの汚れを落とす処理です。
- 密着不良の原因:油分がわずかでも残っていると、金属同士が結合できず、めっきが簡単に剥がれる原因となります。
- 脱脂の種類:油を溶かす「溶剤脱脂」や、鹸化・乳化作用を利用する「アルカリ脱脂」など、油の種類に応じて使い分けられます。
脱脂(アルカリ脱脂・溶剤脱脂)とは?|めっき不良を防ぐ前処理の重要性
めっき加工は、金属部品の表面に別の金属を析出させる技術ですが、その土台となる金属表面が完全にクリーンでなければ、正常なめっき皮膜は形成されません。切削加工やプレス加工を経て持ち込まれる部品には、切削油、防錆油、プレス油などがべっとりと付着しています。これらの油分を完全に取り除く工程が「脱脂(だっし)」です。脱脂はめっき品質を左右する最も重要な前処理工程と言っても過言ではありません。
1. 脱脂の主な種類とメカニズム
油汚れを落とすメカニズムは、主に「溶剤脱脂」と「アルカリ脱脂」に分けられます。
■ 溶剤脱脂
有機溶剤(トリクロロエチレンや炭化水素系溶剤など)を用いて、油を「溶かして」落とす方法です。鉱物油など、アルカリでは落ちにくい油汚れに対して非常に効果的です。ただし、環境への配慮や作業環境の安全性の観点から、近年では使用が制限されたり、密閉型の専用装置が使われたりすることが増えています。
■ アルカリ脱脂
水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液に界面活性剤を添加した液を使用します。動植物油などの油脂を石鹸のように変える「鹸化(けんか)作用」と、鉱物油などを細かい粒子にして水中に分散させる「乳化(にゅうか)作用」を利用します。溶剤脱脂の後の本脱脂として、あるいは超音波洗浄と組み合わせて使用されることが一般的です。
また、これらに加えて、電気の力を利用して金属表面からガスを発生させ、汚れを物理的に剥ぎ取る「電解脱脂(陽極脱脂)」を最終的な脱脂工程として行うことで、目に見えないレベルの油分やスマット(黒いスス)を完全に除去します。
2. よくある質問(FAQ)
Q1. 脱脂が不十分だとどうなりますか?
A. 表面に油膜が残っていると、その部分にはめっきが析出しない(未着)、あるいは析出しても金属結合していないためテープテスト等で簡単に剥がれる(密着不良)原因となります。
Q2. どんな油でも落ちますか?
A. 種類によります。シリコン系の油や、高温で焼き付いた油などは、通常のアルカリ脱脂では落ちないことが多く、特殊な洗浄液や物理的な研磨が必要になる場合があります。
Q3. 脱脂液はずっと使えますか?
A. 使い続けると油が液中に蓄積して洗浄力が低下するため、定期的な液の更新や、油水分離機などを用いたメンテナンスが欠かせません。
Q4. アルミニウムの脱脂で気をつけることは?
A. アルミニウムは強いアルカリに溶ける性質(両性金属)があるため、鉄と同じような強アルカリ脱脂液を使うと表面が荒れてしまいます。アルミ専用のマイルドな弱アルカリ脱脂剤を使用します。
Q5. 超音波洗浄とは何ですか?
A. 液中に超音波を照射し、微細な気泡が発生して弾ける際の衝撃力(キャビテーション効果)を利用して、複雑な形状の穴の奥の油やゴミを叩き出す洗浄方法です。
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