内部応力(引張応力・圧縮応力)

【この記事の要点】

  • 内部応力とは:めっき皮膜が金属表面に形成される過程で、皮膜自身が縮もうとしたり、広がろうとしたりする「目に見えないストレス(力)」のことです。
  • 引張応力と圧縮応力:皮膜が縮もうとする力を「引張応力」、膨張して広がろうとする力を「圧縮応力」と呼びます。
  • めっき不良の隠れた原因:応力が大きすぎると、めっきにヒビが入ったり(クラック)、下地から剥がれたり(剥離)、ウィスカが発生したりする重大な原因となります。

内部応力(引張応力・圧縮応力)とは?|クラックと剥離の隠れた原因

めっき加工は、金属のイオンが素材の表面で結晶化して積み重なることで皮膜を形成します。この結晶が成長する過程で、原子の配列の乱れや不純物の混入、温度変化などにより、皮膜そのものに目に見えないストレスが蓄積されます。これを「内部応力(ないぶおうりょく)」と呼びます。内部応力は、製品の寸法に影響を与えたり、時間の経過とともに致命的なめっき不良を引き起こす非常に厄介な要素です。本記事では、高度なトラブルシューティングに不可欠な応力のメカニズムを解説します。

1. 引張応力と圧縮応力による不良の違い

内部応力には、大きく分けて2つの方向への力が存在し、それぞれ引き起こすトラブルの現象が異なります。

■ 引張応力(ひっぱりおうりょく)

めっき皮膜が、自ら「縮もうとする」力です。下地の金属にしがみついた状態で縮もうとするため、皮膜が引っ張られて限界を超えると、ピシッとヒビが入ります(クラック)。クロムめっきやニッケルめっきなどで強く現れやすく、ひどい場合は皮膜が反り返って剥がれ落ちる(剥離)原因になります。

■ 圧縮応力(あっしゅくおうりょく)

めっき皮膜が、自ら「膨張して広がろうとする」力です。下地に固定されたまま広がろうとするため、逃げ場を失った皮膜が表面から浮き上がって「フクレ」を生じさせます。また、錫(スズ)めっきや亜鉛めっきにおいて、この圧縮のストレスが皮膜内部に蓄積すると、その圧力を逃がすために表面から針状の結晶が飛び出してくる「ウィスカ」の根本的な原因となります。

2. よくある質問(FAQ)

Q1. 内部応力はどうやって測定するのですか?

A. 「スパイラルコントラクトメーター」などの専用機器を使用し、テスト用の金属箔にめっきを施した際の「ねじれ具合」や「反り具合」から応力の強さと方向を測定します。

Q2. 応力を減らす方法はありますか?

A. めっき液の中に「応力緩和剤(サッカリンなど)」と呼ばれる添加剤を入れることで、意図的に応力を下げたり、方向をコントロールしたりすることができます。

Q3. 熱処理で応力は変わりますか?

A. 大きく変わります。めっき後にベーキングなどの熱処理を行うと、皮膜内部の結晶構造が安定し、残留していた応力が解放・緩和されるため、変形やウィスカの防止に有効です。

Q4. 下地金属の応力は影響しますか?

A. 影響します。プレス加工や激しい切削加工によって素地(下地)そのものに強い応力が残っていると、その上からめっきをした際に悪影響を及ぼし、密着不良を起こすことがあります。

Q5. めっきが厚いほど応力は大きくなりますか?

A. 一般的に、めっきの厚みが増すほど内部応力は累積して大きくなる傾向があります。そのため、厚付けめっきを行う場合は応力管理が特に重要になります。

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