寸法公差(めっき厚による寸法変化)
【この記事の要点】
- 寸法変化の基本原則: 軸(外径)は太くなり、穴(内径)は狭くなる。変化量は「片側膜厚の2倍」で計算する。
- ねじ部の落とし穴: 三角ねじの場合、有効径は「膜厚の約4倍」も変化するため、特別な注意が必要。
- トラブル回避の鉄則: 設計段階であらかじめ「めっき代」を見込んだ公差を設定し、図面に明記することが重要。
寸法公差(めっき厚による寸法変化)とは?|ねじ・嵌合不良を防ぐ計算方法
めっき加工において、設計者様や発注担当者様が最も恐れるトラブルの一つが「めっき後に部品が太って(狭くなって)組み立てられない」という嵌合(かんごう)不良です。めっきは表面に金属の被膜を形成するため、必ず寸法が変化します。本記事では、めっきによる寸法変化の正しい計算方法と、図面指示のポイントを解説します。
1. めっきによる寸法変化の基本ルール
めっき被膜は製品の表面全体に均等に形成されることを前提に計算します。したがって、直径(外径・内径)の変化は、片側の膜厚の「2倍」になります。
■ 円柱(軸)の計算例
直径10mmのピンに、5μm(0.005mm)のめっきを施す場合:
仕上がり外径 = 10mm + (0.005mm × 2) = 10.01mm
■ 穴(内径)の計算例
内径10mmの穴に、5μm(0.005mm)のめっきを施す場合:
仕上がり内径 = 10mm - (0.005mm × 2) = 9.99mm
2. 要注意!「ねじ部」の寸法変化は膜厚の4倍
最もトラブルが起きやすいのが「ねじ部」です。一般的なメートルねじ(三角ねじ:角度60度)の場合、斜めの斜面にめっきが乗るため、ねじの有効径(かみ合いの基準となる径)は、めっき膜厚の「約4倍」変化します。
例えば、5μmのめっきを施すと、有効径は約20μm(0.02mm)太くなります。公差の厳しい精密ねじの場合、この変化によってナットが入らなくなるため、加工前の「白生地」の段階で、めっき代を差し引いた寸法(アンダーサイズ)で切削・転造しておく必要があります。
3. 日本バレル工業の「寸法公差」へのアプローチ
小物部品を一括処理するバレルめっきでは、膜厚のバラつきが生じやすいのが一般的です。しかし、当社では長年のデータ蓄積に基づき、最適なバレル回転数と電流値の制御を行うことで、指定された公差内に収める精密な膜厚管理(例:3〜5μmの範囲内など)を実現しています。
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 図面には「めっき前」と「めっき後」どちらの寸法を記載すべきですか?
A. トラブルを防ぐため、「めっき後の仕上がり寸法」であることを図面に明記し、かつ要求される膜厚(例:5μm以上)を併記するのが最も確実です。
Q2. 穴の奥深くまでめっきは均一につきますか?
A. 電気めっきの場合、穴の入り口付近は厚くなりやすく、奥に行くほど薄くなる傾向があります。深い穴の公差が厳しい場合は、無電解ニッケルめっき等のご提案も可能です。
Q3. 角部(エッジ)の寸法はどう変化しますか?
A. 角部は電流が集中しやすいため、平滑な面よりもめっきが厚くつく傾向があります。精密な角の嵌合がある場合は、面取りやR付けを推奨します。
Q4. 膜厚の「上限」を指定することは可能ですか?
A. 可能です。JIS規格では「最小膜厚」のみが規定されることが多いですが、当社では「3μm〜8μmの範囲内」といった上限設定の厳しい公差管理にも対応しております。
Q5. めっきで寸法が太りすぎた場合、後から削れますか?
A. めっき後の切削は防錆力の低下や被膜の剥離を招くため推奨しません。一度めっきを剥離(やり直し)する処置になりますので、事前の寸法計算が重要です。
「この公差でめっきできる?」事前の技術相談が鍵です
「ねじが入らない」「軸がはまらない」といった後戻りを防ぐためには、設計・試作段階でのめっき業者とのすり合わせが不可欠です。厳しい寸法公差でお悩みでしたら、創業70年の日本バレル工業へお気軽にご相談ください。
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