メッキの膜厚はどう決める?耐久性と寸法のバランスを保つ適正値の考え方

製品の設計段階において、避けて通れないのが「表面処理(メッキ)の仕様決定」です。特にメッキの「膜厚(まくあつ)」は、製品の寿命を左右する耐食性と、組み立て精度に関わる寸法公差の板挟みになりやすく、多くの設計担当者様が頭を悩ませるポイントです。

「とりあえず厚くしておけば安心だろう」という判断は、ネジの嵌合不良やコスト増を招くリスクがあります。本記事では、創業70年のメッキ加工専門企業である日本バレル工業(NBK)の知見を活かし、メッキ膜厚の適正値の決め方と、失敗しないための管理ポイントを解説します。


1. メッキ膜厚を決定する2つの絶対条件

メッキの厚さを決める際、軸となるのは「耐食性(守る力)」「寸法公差(納まる精度)」のバランスです。

① 使用環境による「耐食性」の要求

メッキの最大の目的は、素材の腐食を防ぐことです。一般的に、膜厚が厚いほど錆びにくくなります。

  • 屋内・乾燥環境: 3〜5μm程度が標準的。
  • 屋外・多湿環境: 8μm以上、過酷な環境では20μm以上を求められることもあります。
  • 自動車部品・建築金物: JIS規格や各メーカーの社内規格に基づき、厳格な膜厚指定が行われます。

② 部品の機能による「寸法公差」の制限

精密部品やネジ類、嵌合(かんごう)が必要な部品では、メッキの厚みが原因で「入らない」「回らない」といったトラブルが起こります。

  • ネジ部品: 膜厚が厚すぎると、ネジ山が太くなり噛み合わなくなります。
  • 精密嵌合部品: ミクロン単位の精度が求められる場合、メッキによる寸法変化を計算に入れた設計が必要です。

2. 【種類別】主要なメッキの標準的な膜厚目安

日本バレル工業で多く取り扱うメッキを例に、一般的な目安をまとめました。

メッキの種類 標準的な膜厚範囲 主な用途・特徴
亜鉛メッキ 5μm 〜 20μm 防錆目的。安価で汎用性が高い。
ニッケルメッキ 3μm 〜 10μm 装飾・耐食・導電性。外観品質が求められる部品。
ポイント:
バレル方式による一括処理を行う場合、部品同士が重なり合うため、静止メッキ(ラック式)に比べて膜厚のバラつきを抑える高度な管理技術が求められます。

3. 日本バレル工業が選ばれる理由:徹底した「膜厚管理体制」

「図面通りの膜厚で、かつバラつきを最小限に抑えたい」こうしたお客様のニーズに応えるため、日本バレル工業では以下の強みを活かした一貫対応を行っています。

研究開発・品質管理へのこだわり

当社では、単にメッキを加工するだけでなく、安定した品質を提供するためのバックボーンを整えています。

  • 処理液の濃度管理: 毎日欠かさず液組成を分析。膜厚の安定は、まず「液の健康状態」から始まります。
  • 最新の膜厚測定: 蛍光X線膜厚計等を用い、出荷前の厳格な検査を実施。
  • 耐食性試験の徹底: 塩水噴霧試験機を自社保有。設計値が実用上で十分な耐食性を持っているか、科学的根拠に基づき確認します。

試作から量産まで、最適な条件を「提案」

図面に「5μm以上」と書かれていても、その部品の形状や用途によっては、加工上のリスクが隠れている場合があります。当社は創業70年の経験から、図面通りの加工が困難と判断した場合には、最適な処理条件や工法の変更(バレル方式への最適化など)を積極的にご提案します。これにより、量産移行時の歩留まり向上とコスト削減を実現します。


4. 「図面通り」を実現するために。発注前に確認すべき3つの実務ポイント

仕様書通りの品質を安定して得るためには、表面上のスペックだけでなく、加工現場の「管理能力」を見極めることが重要です。トラブルを未然に防ぐため、以下の3点を確認することをお勧めします。

  1. 膜厚測定の信頼性と頻度
    測定機器(蛍光X線膜厚計など)が適切に校正され、どの程度の頻度でサンプリング検査が行われているか。データの裏付けがあるかが信頼の鍵となります。
  2. 試作段階でのデータ共有
    量産へ移行する前に、試作段階で「実際にどれくらいのバラつきが出るか」のデータを開示してくれる業者を選ぶことで、設計変更や公差の見直しがスムーズになります。
  3. バレル処理のノウハウ
    小物部品の大量処理(バレル方式)は効率的ですが、独自のノウハウがないと膜厚の過不足が生じやすい工法です。対象物の形状に合わせた最適なバレル回転数や電流値の調整ができる専門性が不可欠です。

日本バレル工業は、これら全ての項目において高い水準を維持し、精密部品から自動車部品まで幅広い分野で信頼をいただいています。


まとめ:膜厚の悩みは「メッキのプロ」への相談が近道です

「この公差内にメッキを収められるか?」「この環境で5μmで足りるか?」そんな疑問をお持ちの際は、ぜひ日本バレル工業へご相談ください。試作・開発段階からの技術支援により、貴社製品の価値向上と短納期・安定供給をサポートいたします。

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小ロットの試作から大量生産まで、柔軟に対応可能です。

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日本バレル工業株式会社
創業70年。亜鉛メッキ、ニッケルメッキを中心に、バレル方式による高効率・高品質な表面処理を提供。試作から量産、検査まで一貫した品質管理体制でお客様のモノづくりを支えます。

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